野菜や果物には、冷蔵庫に入れないほうがいいものがあると教えられた記憶があるけど、基準がわからない…。見た目はあまり日持ちしなさそうなのに、「常温で保管」と包装には書いてあるけど、本当にいいの…?そんな疑問をお持ちの方のために、常温保存についての豆知識や、常温保存したほうが長持ちしたり、味が落ちにくかったりする食材についてご紹介します。
目次
そもそも「常温」って?
まず、そもそも「常温」とは、どのくらいの温度のことを指すのでしょうか。常温という言葉には、「一定に保たれた温度」と「通常時の範囲内とされる温度」の2つの使い方がありますが、食品に関しては基本的に後者が使用されます。その「通常時の温度」も定義によって変わり、例えば化学的には15℃で、これは地球全体の平均気温でもあります。
一方、今回のテーマである食品の保存にも大きく関わってくる「日本産業規格(JIS規格)」では、5℃~35℃と定められています。
ただし、食品は状態や調理法などによって適切な保管温度が変わってきますので、例えば加工食品の場合は、製造業者が実施した検査結果を基に、取り扱う食品が最大限長持ちするような温度を目安として記載した上で、常温保管が可能としているケースも多くあります。
とはいえ、常に温度計を気にしているわけにもいかないでしょうし、大体の目安として、「冷蔵庫内よりも高く、人間が不快に感じない程度までの範囲の温度」と考えておけば問題ないでしょう。
常温保管できる食品の傾向
表面がしっかり乾燥している、厚い皮に覆われている、水分がほぼ抜けている、糖分を多く含む、などの特徴のある食品は、常温保管が可能であることが多いです。
例を挙げると、ジャガイモやサツマイモなどの芋類や、表皮が乾燥したタマネギなどは、適切な環境下で保管すれば、半年以上保たせることも可能で、場合によっては冷蔵保管のほうが早く劣化が進みます。柑橘類や熱帯地方原産の果物も常温で問題ありません。
ちなみに、バナナはそのまま冷蔵庫に入れると、バナナ本体が発するエチレンによって熟成が進み、あっという間に真っ黒になってしまいますが、1本ずつ袋に入れておけばある程度は長持ちさせることができます。
乾燥食品の中でも特に肉類・魚介類の干物は、冷蔵保管で低温状態に置くと、固くなって風味が落ちてしまうことが多く、常温保管が推奨される食品の代表格です。糖分が多く常温で長持ちする食品の代表格といえば、やはり羊羹でしょう。なんと常温で数年間保管することができる上に高カロリーなので、災害時用の非常食としても注目されています。
常温保管する際はこんなところに注意!
いくら常温保管が可能な食品といっても、湿気が溜まりやすい、直射日光が当たる時間帯がある、30℃を超えるような高温になる、といった場所は、保管場所としては不適切です。湿気はカビや腐敗の原因になりますし、日光や高温は逆に水分が抜けてしまう他、こちらも高温を好む細菌により腐敗が進む恐れがあります。
常温での保管場所としてベストなのは、年間を通して温度の変化が少なく、直射日光も当たらず、湿度も一定に保たれていて、適度な空気の入れ替えが可能という、例えばワインセラーのような空間なのですが、都市部の一般家庭では非現実的ですよね。
そのため、季節によって食品を保管する場所を変えたり、すだれや衝立などで直射日光が当たらないようにしたりといった対策を取れば、ある程度は食品の常温保管に良い環境をキ―プできます。暑さの厳しい日は、冷房の効いた部屋に避難させるのも有効でしょう。
常温保管できる生鮮食材の見極め方
肉類や魚介類のほか、乳製品や豆腐といった類のものであれば、冷蔵保管が必須とすぐに判断できます。しかし、生鮮食品であっても野菜や果物などは、なかなか判断に困ってしまうものも多いですよね。
一番簡単なのは、スーパーの青果コーナーを参考にすることです。冷蔵ケースに陳列されているものは基本的に冷蔵保管、それ以外の冷蔵設備の無い棚やカートに直接置かれているものは常温でも問題ない、というように分類できます。
ただし、店舗でも季節や空調の温度などによって、陳列方法を変えていることがあります。一般家庭では、室温が常にやや低めに保たれているスーパーよりも温度管理が難しくなるので、どちらが良いかわからずに迷ってしまうものについては、冷蔵庫に入れてしまったほうが安心でしょう。
パッケージに説明があれば基本的に従う
こちらは特に肉類・魚介類の半加工品や、練り菓子・焼き菓子などに多く見られるパターンですが、一見あまり日持ちしそうに見えず、絶対に冷蔵庫に入れたほうがいいだろうと思って説明を見ると、「直射日光・高温を避け、常温で保管」と書かれていた、という食品に出会うこともあります。
一般的に、市販されている加工食品は、使用されている食材や調理法、想定している流通・販売環境に応じて、細菌の繁殖度合いや風味の変化の検査を行った上で賞味期限・消費期限を決めています。
更に、実際に製品として市場に出す際の期限は、検査結果よりもやや余裕を持って設定するケースがほとんどです。そのため、パッケージに適切な保管方法が記載されていれば、それに従うのが一番です。
なお、未開封状態では常温保管が可能でも、開封後は要冷蔵、という食品はかなりありますが、これは開封して一度でも空気に触れてしまうと、そこから細菌の繁殖や品質の劣化などに繋がるためです。面倒でも都度冷蔵庫に入れるようにしましょう。
これはNG!やってしまいがちな「常温保管」
ここまでは、常温保管して問題ない食品、適切な環境なら常温のほうが長持ちする食品などについて説明しましたが、最後にやってしまいがちな「無意識な常温保管」についても触れておきましょう。
例えば、刺身のような傷みやすい食品を買って、30℃の炎天下の中を20~30分自転車で走るというのは、立派な「ダメな保管方法」です。屋外にいる間に繁殖した細菌が原因で劣化が早まり、消費期限内だったのにお腹を壊す…なんてことになりかねません。面倒でも保冷バッグと保冷剤の使用をおすすめします。
また、実はリスクを軽視しがちなのが、冷凍保管していた食品の常温解凍。中でも肉類や魚介類など、たんぱく質を多く含む食品は特に危険です。解凍する際にまな板やトレーなどに取り出して、そのまま常温で放置していると、温度や水分などの条件によっては、手指や調理器具から付着した細菌があっという間に繁殖してしまいます。
解凍する際は、時間をかけてでも冷蔵庫の中で行いましょう。袋に入れて流水で溶かしても問題ありません。